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私は、公認会計士として、20年間、大手監査法人で金融商品取引法(証券取引法)監査及び会社法(商法)に基づく監査業務に従事してきました。
残念ながら近頃では、監査人の指導的役割は弱まっていると感じます。
経済情勢に限らず会計・税務の世界でも、環境変化はものすごい勢いで進んでいます。そのような状況下で的確に対応しようと思えば、“検討事項”が生じます。
例えば、
監査対応
監査法人へ話しづらいような相談や特定案件に対しての参考意見
税務対応
単なる税務処理ではなく、会計処理を十分に認識した上での関連性ある申告調整
国税調査が行われるときの理論的助言
グループ会社統括対応
グループ会社をどう統括するかの再確認(実際の経営上、内部統制上、IFRS上)
管理面の弱い特定のグループ会社に対する指導
検討事項が生じても、事前に監査人と打ち合わせる環境が少なくなり、事後で問題化した時には取り返しのつかない事態に陥ることがあります。
検討事項が生じたときに何でも「意見交換」できる相手がいれば、安心に感じられます。
監査(監査手続)も一昔前とは大きく変わりました。
リスクアプローチの徹底、監査調書の電子化、検討事項の調書化、審査体制の強化、品質管理レビューの強化、公認会計士・監査審査会の制定、内部統制監査及び四半期レビューの導入等々。
一番変わったのは、会社の皆様と監査人が率直にお話する機会が減ってしまったことです。監査人の独立性が強く求められるようになったことも一因かもしれません。しかし、心理的な距離が離れてしまったことが、最も影響しているのではないでしょうか。
監査(audit、auditing)の語源は聞くことにあります。
「意見交換」は、「聴く」ことから始まります。
不正リスク対応基準が、平成25年4月に始まる決算期から適用されます。つまり、平成26年3月期決算に係る財務諸表監査がスタートです。
不正リスク対応基準の導入によって、監査手続が新しく追加されます。
大きな特徴は、「不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況を識別した場合には、経営者に質問し説明を求めるとともに、追加的な監査手続きを実施し、それによって入手した監査証拠に基づいて経営者の説明に合理性があるかどうかを判断する。」ことにあります。しかしながら、同基準の導入前でも不正に対する監査規範はすでに国際的に遜色ないものになっているはずです。
今後、監査人に求められることは“その規範をどう実行するか”すなわち職業倫理の問題になります。単なるノウハウの問題ではありません。
同基準の導入によって監査実務が混乱することが予想されます。
大切なことは、経営者及び企業の利害関係者も、不正をどうすれば防止できるのか、それぞれの立場で改めて考えることではないでしょうか。
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